やくもの撮影へ出かけた話 エピソード0

※この記事はメインブログから鉄道ネタを寄せてきた転載記事です。

 去る6月9日・10日、私は撮り鉄旅行に行ってきました。かなり全国ニュースなどで良い意味でも悪い意味でも取り上げられていたのでご存じの方も多いと思いますが、381系を使用した特急『やくも』の定期列車の運用がまもなく終了する、ということで、日にちが近づくにつれて『最後にもう一度見ておきたい』『せっかくカメラを買ったからそれっぽいことをしてみたい』と5月に入ってから思うようになったためです。
 といってもちょうど5月は下旬まで社長が長期出張のために休みを取れるのかどうか自分でもあまり定かではなく、実際に休みを取れると決まったのは5月末・もう2週間ほどしかない時点でした。ここから大急ぎであれやこれやと調べ、なんとか間に合わせた末に結果として満足行く旅行となりました。そんな話題を数回に分けて書いてみようと思います。今回は出発までを書いたエピソードゼロですw


・そもそも381系って何?

 という方が大半でしょうから少しだけ。381系は日本国有鉄道が1973年に投入した特急型車両で、曲線をより高速で曲がることを目的とした車体傾斜式・俗に振り子式と呼ばれる台車を採用した画期的車両でした。
 鉄道が曲線を曲がる際、遠心力が強すぎると列車は脱線・転覆してしまいます。例えば線路をオーバル トラックのように傾けてしまえば(鉄道ではバンクではなくカントと呼ぶ)、遠心力は垂直方向の力に振り替えられるのでより速く曲がることができて限界が上がりますが、鉄道は低速で通過する時もありますしそこで停車するかもしれませんから、あまりに傾いたら危険なので限度があります。
 自動車と同じで重心が高いと鉄道車両も横転するので低重心化も重要ですが、カントが足りていない曲線ではいくら低重心で高速走行ができても猛烈な遠心力がかかってお客さんが困ります。だったら車体も傾けてしまえ、というのが振り子台車です。簡単に言うと台車と車体の間に『コロ』が付いていて、曲線を走行して遠心力がかかると車体が台車よりも外側までズレ動きます。ザックリ言って車体の頭頂部の部分を軸にして円回転方向で車体がズレると内側に傾くため、真っ直ぐガッチガチに固まった状態の車両よりも遠心力が逓減されるので乗り心地が良くなります。
 根本的な台車にかかっている遠心力は変わらないので車両を傾けても安全上の限界速度には変化がありませんが、今までは『脱線するかしないかで言えばしないけど、乗り心地が良いか悪いかと言われたら悪い』という理由で設けられていた最高速度を引き上げることが可能になるので、結果として高速走行が可能になりました。(そもそも振り子式車両は低重心で設計するのが大前提なので、結果として曲線での安全上の最高速度自体も高くなります)

トレたび 安心・安全・スピードアップ! 振り子式特急

 ただ、381系のような車両は遠心力を利用して勝手に傾く『自然式』なので、遠心力は確かに低減されるけど独特の揺れによって乗り物酔いをしやすい、という致命的な欠点もあります。というのも、遠心力がかかって、一定以上の力が加わって傾き始めて、というところに時間差があったり、S字だとこれが左右に振り回されたりするので、感覚として不自然なんですね。私は全く鉄道では酔わないので関係ないですが、うちの姉も母も酔うタイプなので振り子はアウトでした。

 381系は中央本線の特急『しなの』で使用された後、紀勢本線の『くろしお』、そして伯備線の『やくも』へと展開されていきました。いずれも山間部や海岸線で曲線が続く路線です。くろしおは京都・大阪~和歌山・白浜・新宮を結ぶ特急なので子供のころから馴染みがあり、実は我が家には私と姉がまだ小さい頃に天王寺でくろしおと一緒に撮った写真がずっと飾ってあります(手を高速で動かしたら残像が残るんじゃないかという浅はかな考えの下、私はピースをした手を上下にブンブン振っていたのを今でもよく覚えています。でもスローシャッターならあながち間違えてはいないことを大人になってから知りました。)
 くろしおは2015年まで381系が走っていたんですが、当時は別に引退だからと気にするほどでもありませんでした。やくもが新型車両になると聞いても「やっと無くなるんかあ、長いこと投資ケチったなあ」ぐらいにしか思っていなかったんですが、昨年カメラを買ったことが悪影響(?)を与えてしまい、いわゆる迷惑撮り鉄のニュースが多く報じられるようになったころに『そうか、6月で終わりか』などと思ったところで火がついてしまいました。
 ちょっと色々ありまして4月~5月は精神的にも仕事的にもしんどかったものですから、あんまり下を向いてばかりもいられないし、いつ何が起きるか分からないからやりたいことはやれる時にやった方が良い、というのもありました。

・旅の目的

 さて旅行の話になります。今回の目的はもちろん381系やくもの撮影。実は381系は引退に花を添えるべく過去のカラーリングを復刻した編成が走っており

・ピンク色の『ゆったりやくも色』
・緑色の『緑やくも色』
・クリームと赤の『国鉄色』

の3パターンがありました。もう1色、パノラマ型グリーン車を連結した紫色の『スーパーやくも色』もあったんですが、これは一足早く5月に引退済み。ちなみに私は過去に旅行でスーパーやくもと緑やくもには乗っており、ゆったりやくもはたまたまデビュー前に大阪駅で展示されていたのに偶然遭遇して少しだけ実物を見たことがあります。
 スーパーやくもに乗った際には『踏切事故の影響で伯耆大山駅手前で1時間以上止まる』という災難に見舞われ、運転再開後ゆーーーっくりと走っていたら左側に野球場が見えて「これが米子球場か!」と思った、という変な思い出がありますw
 目的としては、これら3つと新型車両273系を写真に撮ること、そして撮影場所は駅撮りではなく徒歩で行けそうな線路沿いの撮影地へ出向くこと、余裕があれば岡山県内のその他の路線にも乗車して乗り鉄を堪能しつつそれらの写真を撮ること、と設定しました。


・出発前から降りかかる課題

 大都市のように数分に1回列車が来れば沿線で撮影しても即移動できるし、路線の距離が短ければ同じ列車を追いかけて移動し何度も撮影できます。しかし伯備線は1時間に1回とかしか列車が来ないですし、岡山から出雲市まで結ぶ特急は距離が長すぎるし、381系は1日1~2往復なので追いかけて撮って折り返して、というのは問題外。どこかで待機して一発勝負しかありません。
 駅から行ける撮影地を探し、それを列車の時間に合わせ、無駄な待ち時間を発生させずに、体力も考え、駅に移動して乗れた場合、乗り遅れた場合、何か食べ物が手に入りそうな場所、撮影地が満員だった場合の代替策、など考えることが山積みで本当にギリギリまで考えました。
使用した自作メモ
時刻表と撮影場所の概ねの列車通過時刻を
(手計算して)書き込んだ。
結局出番は無かったが井原鉄道のダイヤも。
2日間使い倒してボロボロに


 撮影地の込み具合や問題、あるいは立ち入り禁止なんかが設定されていると大変なので関連するXの投稿も気にしていましたが、旅行3日前の6月6日、背筋の凍る出来事が。

[国鉄やくも 車両故障により運休]

 発表では6日・7日の2日間は運休とのこと。しかし引退まであとたった1週間、何が壊れたのか分かりませんが主電動機とかだったらもう新しいものを寄越す時間もないし手間も惜しいから、ひょっとしてこのまま予定を繰り上げて終わりになるのでは・・・ああ、仕事の都合なんて気にせずに思い切ってもう1週早く休みを取るように言っていれば・・・後悔が募ります。
 さらにもう1つの懸念材料、まだ梅雨入りこそしていませんでしたが、当日が近づくにつれて現地の天気予報が怪しくなってきました。日本の南海上を進む前線を伴った低気圧が北上し、西日本を中心に雨が強まるのではないか、という話。ズレろ、外れろ、と願いますが、前日にはもう回避不能であることを悟りました。幸い月曜日の朝ごろには低気圧は東へ抜けるようですが、そうなると日曜日は全然ダメかもしれません。救いだったのは、もう全然ダメかと思った国鉄やくもは無事に運用に復帰しているとの情報が流れてきたことでした。予定としては

プランA 日曜日にやくもをコンプリート、月曜日は井原鉄道など乗ったことがない路線に乗車
プランB 両日ともやくも一本に絞る

 で考えていましたが、雨で1日目が潰れますのでもうプランBが濃厚です。日曜日はロケハンと割り切って、月曜日に本番、と考えれば悪くはないでしょう。ああ、仕事の都合なんて気にせずに(ry

・ザックリとした旅先の説明

 今回私が駆けずり回るのは主に伯備線です。伯耆国と備中国を結んでいるので伯備線、ハクビシンとはもちろん関係がありません。

 岡山から3駅西に進んだ倉敷で山陽本線と分かれ、厳密にはここが伯備線の起点。ここから中国山地を乗り越えて鳥取県の伯耆大山で山陰本線と合流します。ただ、今回私が活動するのはそんな遠くまでは行かず、最大で足を延ばしても備中川面(びっちゅうかわも)までの区間。他に木野山(きのやま)、豪渓(ごうけい)の3か所を撮影地点と想定し、あとは地域内で最も規模が大きい備中高梁(びっちゅうたかはし)や総社(そうじゃ)を雨避け、時間つぶし等の拠点として活用する予定としました。他にも気になる場所はたくさんあるんですけど列車+徒歩移動だと回れる場所が限られます。

 そして、そんな旅行を支えてもらったのがこちら、岡山ワイドパス。JR西日本が北陸・瀬戸内・山陰地方の旅行に関する様々な観光情報やサービスを展開するブランド・tabiwa限定で発売されているものです。


 岡山県内の在来線に加え、一部のバスや船舶、岡山市の路面電車、井原鉄道まで網羅して3日間乗り放題、これでお値段たったの4200円。しかも青春18きっぷとは違い、特急列車も特急券だけ購入すれば乗車券としての効力は有効です。行きあたりばったり、かつ同じ場所を行ったり来たりする可能性が高い今回の旅行では強い味方となりました。
 今回は結果としてほぼ伯備線を行ったり来たりするだけになりそうですが、乗り鉄なら相当お釣りが来ると思います。tabiwaには他にも同様の乗り放題券がエリアごとに用意されているので、こちらを訪れる方はぜひ一度旅行に合うものが無いか調べてみることをお勧めします。以上JR西日本の旅行サービス・tabiwaのご案内でした、ありがとうございました(え)


 雨に備えて靴に防水スプレーをかけて、撮影地が虫だらけだと困るから虫よけスプレーも買って、カメラの充電は万全、前回の悲劇を踏まえて電源スイッチには常に注意し、携帯電話・充電器もばっちり。前回忘れた水もちゃんと持って、早く寝て、、全てヨシ!
 6月9日、一番列車であるやくも1号に乗車するため、私は午前5時過ぎに家を出て、山陽新幹線の1番列車・みずほ601号へ乗車すべく家を出たのでした。財布に念のため入れておく予備の現金10万円を家に置き忘れたまま・・・


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